小さな権力2016/03/26 11:27

小さな職場で、女性が小さな権力を与えられたとき、どうふるまうのか?
たとえば、ある部署の主任とか、リーダーとか、、、。

私が請われて中途採用で管理職に就いた職場では、小さな権力者の奇怪な行動が展開していた。
最初は、わけがわからなかった。
この人は、何がしたいのだろう? と全く理解不能だった。

とにかく、変に気を回す(私には回し過ぎに見える)、嘘をつく(忘れっぽいので自分が言ったことも忘れる?)、部下についてよくわからない人物評価を行う(それが何か? と言うようなことを訴えてくる)、秘密が好き(わたし的には、心地悪い秘密を共有しようとする)、、、。

その人の問題行動がはっきり見えたのは、その人の管理下で働いている人たちが、私にその人のパワハラを直接訴えてきたからだ。

些細なミスをとことん叱責する、突然激怒する、一人の部下だけを排除する、特定の人を取り立てる、明らかな嘘を平然と言う、新入りの部下の初日に一番難しい仕事を任せる、言うことがころころ変わる、相手によって変わる、、、などなど、呆れるほどの非倫理的言動である。
「この人には良心というものがないのか」と、空恐ろしい気がした。

結局、すったもんだの末、この人をめぐる騒動は鎮静したが、他の困難も私一人の身に降りかかり、私はからだをこわして退職を余儀なくされた。

まぁ、退職はいいのだ。
長居をするような職場ではなかった。
働いている人たちの気持ちも尋常ではないように見えていたから。
箱の中に腐ったリンゴが一つあると、他のリンゴも腐っていく、というようなたとえ話をしたくなるような状況だった。

でも、後々、ものすごく、このことは考えた。
なぜ、あの人は、あそこまでおかしかったのか?

私の周囲の事情を知っている人たちが言っていたのは、持ち慣れない権力(つまり、数人の部下を持ち、管理監督権を与えられた)を持ってしまったら、使い方を誤る、というものだった。
でも、それだけでは、理由にならない。
私だって、職場の指揮命令権からいけば一番上位に位置づいていていたが、そんなもの持ったことのない権限だ。
が、その人のようにはならない。

それで考えたのは、その人の自信のなさ。
それは、抑圧され、パワハラを受けたその人の部下にあたる人たちも言っていた。
「あの人は不安なのでしょう」
「自信がないのだと思います」
「かわいそうな人かもしれません」と。

では、私には不安がなく、自信があったのか? 
否、私だって不安だったし、自信もなかった。
でも、その人とは何か違う。
何が違うのか?
 
その人は、部下にバカにされるのではないかといつも不安だったのだろうと思う。
自分より学歴の高い部下がたくさんいた。
自分より優秀な部下がたくさんいることもわかっていただろう。
それなのに、リーダーの立場に置かれた。
バカにされたくない、自分の方が優れていると思われたい、、、そのような焦りのような感情がいつもあったのではないか。
どうも、それが当たっているような気がする。
多くの人の証言と私の推理を総合すると、そのあたりに落ち着く。

だとすれば、私にはそれはない。
全く、その不安はない。
それはなぜか? 
自信があるからではない。

私には、学歴で他人を測ったり、優秀かどうかを評価して他人をバカにする習慣がないからだ。
仕事がうまくいっていない人については、どうすればこの人は能力を発揮できるだろう、としか考えない。
何をどうすれば、気持ちよく働けるだろう、という発想しかわかない。
だから、他人が、自分をバカにするかもしれない、なんて、まったく考えない。
どうしたら、仲良くやれるか、しか考えていない。

そういうふうに考えると、その人自身が人をそういう目で見る癖があるのだろう。
人は、自分が考えるように、他人も考えると思いがちだ。

別の話だが、ある事件があったとき、ある人は陰謀説を唱え、私は偶然説を主張したことがあるが、それは二人の特徴の違いがよく表れていたと思う。
ある人は策士の面が強く、私はうっかり者だからだ。
企んでその事態を招いたか、たまたまそういう結果を招いてしまったか、ということは大きな違いだ。

たぶん、私は今後もずっと、偶然説タイプで生き続けるだろう。
あんまり自分のことは好きではなかったが、こうして書いていると、この部分だけは好きかもしれないと思えてくる。